またしても変わったジャンルの記事ですよね。
人と関わるのが苦手な「不器用さん」だった私は、一時期音楽に救われていたのです。
特に、スピリチュアルで民族系の色が濃いワールドミュージックなどのような音楽にハマってました。
普段ながら作業の際に聞き流す音楽とはまた別の、じっくり聴き込み世界に浸る音楽。
私がそのようなものにハマったきっかけの一つである映画を、今回はご紹介します。
この映画がどんなに面白く素晴らしい内容だったか。
黒人音楽の由来についてに理解も深まるかと思います。
しかしながら、現在ではほぼ観る機会がありません。
なので、この記事である程度の内容を解説をさせていただきます。
もし興味を持たれましたら、何らかの方法でご覧いただければ幸いです。
映画:「Return to Goree(ユッスー・ンドゥール 魂の帰郷)」
同作は、Pierre Yves Borgeaud(ピエール・イヴ・ボルジョー)氏が監督を務めました。
彼のYouTubeアカウントにて、同作の予告編(英語字幕)の映像がありましたので貼ります。
「縦30メートル・幅8メートルの船に350~400人の奴隷が詰め込まれ、約3割が中で亡くなった。」
とんでもないメッセージから冒頭から流れます。
冒頭の場所は、アフリカ・セネガルの首都ダカールの沖合にあるゴレ島。
かつて奴隷貿易の拠点として使われ、1000万人以上のアフリカ人が奴隷として連れていかれました。
そして悲惨な条件で、辛くなるような毎日を過ごしていたといわれています。
アメリカへ連れていかれた黒人奴隷も例外ではありません。
しかし、彼らは故郷から遠く離れても音楽を忘れませんでした。
やがて彼らの音楽は、ブルース・ジャズ・ゴスペルなどのような黒人音楽へ発展したのです。
この作品は、これら黒人音楽のルーツを探るドキュメント映画なのです。
歌手:「Youssou N’Dour(ユッスー・ンドゥール)」
この映画の主役は、歌手のYoussou N’Dour(ユッスー・ンドゥール)です。
彼はセネガルの由緒正しき歌い手(グリオ)の家系に生まれました。
若いころから仲間とバンド活動を続け、世界的に有名な歌手として注目されてきました。
今もアフリカ出身のアーティストとしては、世界トップレベルで有名な人です。
ビートルズの名曲をカバーしたこの曲は、ホンダステップワゴンのCMで使われましたね。
アメリカのジャズやゴスペルやブルースというのは、よく黒人音楽として知られています。
知識としては、黒人音楽のルーツはアフリカにあると知られています。
しかしながら、それが明確に証明されたことはありませんでした。
ユッスー自身は、あらゆる音楽のルーツが自分の故郷にあることに気づいています。
だからこそ彼はゴレ島で、ジャズやゴスペルに合わせて自分の歌を演奏しようと決意したのでした。
祖先の魂が故郷へ帰ってきた
映画では、ユッスーは世界各地のミュージシャンを訪ねます。
ゴスペル歌手グループやジャズミュージシャンといった、黒人音楽にゆかりのある人たち。
彼らをゴレ島へ連れて行き、現地で演奏をするというのが映画の流れです。
もちろん、最初から順調だったわけではありません。
特に最初のゴスペルグループに会った時には、宗教の違いがありました。
ユッスーは最初、知人ジャズピアニストのMoncef Genoud(モンセフ・ジュヌ)を訪ねます。
モンセフはユッスーに、あるゴスペルグループを紹介しました。
The Harmony Harmoneers(ハーモニー・ハーモニーアズ)という4人グループです。
ユッスーは彼らの歌に感銘を受けつつも、だんだんとその表情は険しくなります。
何故なら歌を聴いた場所は教会であり、かつ歌の内容がイエス・キリストのための歌だったためです。
ユッスーはイスラム教徒であり、進行する神はアッラーです。
モンセフを通し、ゴレ島ではジーザス(キリスト)ではないものを歌ってほしいことを伝えます。
ハーモニーアズは、信仰する神のことをバカにされた気分になってしまいました。
勝手なことを言われることに腹を立てつつも、やがては和解します。
最終的にはユッスーと一緒に祖先の故郷で歌ってくれますが、最高の演奏です。
そのほか、ジャズ歌手や名ドラマーといった各ミュージシャンとのセッションも最高のジャズです。
このように演奏を通じて、かつて奴隷だった祖先の魂が帰郷することが果たされたのでした。
終わりに
ふと思い出したユッスー・ンドゥールという歌手と彼の映画。
昔、父と渋谷のマニアックで小さな映画館で見たことを思い出します。
映画のエンドクレジットが終わるや否や、観客のほとんどが拍手するぐらいの素晴らしい内容でした。
またDVDを探して観ようと思います。