唐突ですが、必要以上に個人を縛り付ける日本のタテ社会という概念があります。
不器用で人付き合いが苦手な私は、このタテ社会という概念が嫌いです。
会社や学校の中だけでなく、プライベートでも人付き合いを強制されるこのタテ社会。
今までは漠然と頭の中に浮かぶだけの概念でした。
そのような中、私は以下の本を読むことでとてもスッキリしました!
『タテ社会の人間関係 単一社会の理論』という書籍です。
社会人類学者の中根千枝先生によって、もう50年以上も前に書かれた本になります。
日本人の本質を捉えた本であり、今もなお、たくさんの人に読まれています。
本書を読むことで、今の日本における様々な社会問題に当てはめて考えられるようになります。
とてもおすすめの本ですので、簡単に内容をご説明しますね。
集団を形成する「資格」と「場」
まず前提として、人は集団を作り組織を作り、そして社会を作ります。
この流れは世界共通ですよね。
しかしながら、日本は集団を作る時に重視するものが、他の国々とは大きく異なるのです。
中根先生は、社会集団を作る際には大きく2つの要因のうち、どちらかを重視すると定義されています。
それは、資格か場なのです。
ここで資格と場は、それぞれ以下のように定義されています。
その人が持つ特性と考えるとわかりやすいです。
例えば、名前、血筋、学歴、地位、職業のことを指します。
生まれながらに備わっている資格もあれば、生まれてから獲得した資格もありますね。
会社や学校などといった所属機関、それから住んでいる地域も場に含まれます。
資格と場を、わかりやすく仕事で例えてみましょう。
- 資格はデザイナーやエンジニアといった職種を指す。
- 場は株式会社○○といった会社名を指す。
こちらでわかりやすくイメージできたなら何よりです。
日本独特の集団構造
この資格と場について掘り下げるにあたり、インドと日本とを対比させながらお話ししますね。
この2か国は極端なまでに正反対なので、私も知ったときは驚きました。
「資格」を重視するインド人
インドという国は、とにかく資格を重んじる国です。
かつて、身分によって階級を分けるカースト制度が使われてたことはご存じですよね。
まさに資格重視のスタイルを体現していまして、その考え方は今でも残っています。
同じ血縁同士の集団を作ったり、あるいはスキルが高い人だけの集団を作ったりします。
資格重視の集団づくりの典型的な例ですね。
「場」を重視する日本人
それに対して、日本は場を重視する国です。
一昔前の日本を例にして解説しますね。
昔、例えば「鈴木」という家族がいたとしましょう。
鈴木の家の長男は、結婚してお嫁さんが嫁いできました。
一方長男には姉や妹がいますが、それぞれ別々の家に嫁いでいます。
この場合、鈴木の家にとって重要な存在はどちらでしょう。
長男の姉や妹か、それとも嫁いできた長男のお嫁さんか。
なんと、長男のお嫁さんのほうが重要な存在とされたのです!
長男のお嫁さんは、ヨソへ嫁いだ長男の姉や妹とは異なり、今まさに鈴木の家という場に属するからです。
場を重視する日本の一例としてわかりやすいですね。
まあ今となっては、さすがにこのような感覚は薄れたかとは思いますが。
集団の中において日本人は感情で繋がる
ここからは日本の場について深堀ります。
日本ではインドと異なり、それまでは共通点がなかった人たちが集団をつくります。
だからこそ連帯感を持つことが重要であり、理論ではなく感情で結びつき合うようになります。
優秀かどうかではなく、チームとして一体感を持つ人材こそが評価されるのです。
そして感情でつながることで、集団の力はプライベートにまで影響します。
社宅生活や社員旅行といったように、よく従業員のプライベートに会社が深く関わっていますよね。
それらの考え方の根底はここにあります。
そして結びつきが強いからこそ、集団は、やがて閉鎖的になります。
その集団に長く居続けることが重要な文化となるのです。
以上、特定の人が長く居続けるという日本の場を重視した集団についてお話ししました。
なお余談ですが、ヨーロッパや中国における集団に対する考えについても記載されています。
いずれも資格と場のどちらかではなく、その中間であり、かつややインドよりと記載されています。
ここは日本の立ち位置について、特に考えさせられますね。
個人に染み付いた過剰なタテ社会
場の中で、特定の人が集まりやすい構造についてイメージできましたでしょうか。
次に述べられるのが、日本特有のタテ組織とタテ社会です。
人が集まることで場ができますが、もしその場がとても大きな集団になればどうなるでしょうか。
全体がしっかり機能するためにも、自然と場の中で組織というものができます。
つまり親分と子分からなるタテ組織ですね。
このタテ組織では、常に序列というものが働きます。
例え、同じ能力であったり同じ身分であったとしても関係ありません。
その組織に早く所属しているかどうかで先輩・後輩の関係ができあがります。
そして、これが個人の収入に最も影響するのです。
特に歴史がある大企業こそ、序列は強くなる傾向にあります。
日本では、終身雇用が最高のキャリアであり安定だと考えられてきました。
この価値観の根底には、このようなタテ組織に見られる序列意識が深く根付いているのですね。
そして、このような多数のタテ組織から成る社会こそ、タテ社会ということです。
ちなみに海外においても、序列を全く意識しないわけではありません。
例えば中国やインドでも、ある程度序列というものは存在します。
しかしながら、どちらの国も必要であれば、若者が年長者へ反論することも珍しくないそうです。
日本では、上の人の考えというのは絶対ですよね。
しかも、それは単なる組織内での関係には留まらず、個人のプライベートにも影響します。
なおこれは学問の世界にも影響しており、これまで自由な学問的討論ができなかった原因の1つのようです。
タテ社会が成功した「これまで」
さて、このように日本には特有のタテ社会が存在します。
このタテ社会が続いてきた理由は、日本が成功してきた事実があるからなのです。
特にイメージしやすいのは、戦後の高度経済成長期ではないでしょうか。
あの時代は、全国で一斉にインフラ設備が整っていきました。
あのような1つ1つの仕事をする期間が長い事業というのは、ゆっくり時間をかけて進めていきます。
その中で、情的に深く繋がった日本のタテ組織は、少しずつ全員が力を合わせて同じ方向へ突き進みました。
この時に世界でも稀な団結力を発揮し、結果を成し、そして世界に誇る経済大国となったのでした。
まとめ
これまで本に書かれている内容を、一部補足しお話ししました。
- 日本の集団は、場を重視し感情で繋がるため、閉鎖的になりやすい。
- 日本のタテ社会は、過去に成功した事実があるからこそ、今も続いている。
日本の根底には、まだまだ古くからのタテ社会が染みついています。
しかしながら、このタテ社会がいつまでも続いていいのでしょうか。
近頃の様々な社会問題の背景には、このタテ社会の文化が悪く影響しているのではと思うのです。
だからこそ、個人的にどうしても好きになれないこのタテ社会が、少しでも変わればなと願います。
みなさんはいかがでしたでしょうか。
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